雲の上の人

人生

ある日、私は一枚のCDを買って、そのジャケットを眺めながら、

こう思っていた、

素敵な人、素敵な曲、素敵な詩。天才なのね。

 

その頃は、

もう実家の離れの家に住んでいて、丁度、定着した頃だったと記憶している。

 

サッシのあるリビングのちょうどサッシの側に、私は自分で組み立ててペンキの白で色を塗った

棚を置いていて、

その1番上にCDデッキを置いていた。

CDステレオというものだったかもしれない…

その棚には、音楽CDを並べていて、私がそこに立って音楽を聴いて、時々歌って、

そんな場所で、

そのCDを聴きながらジャケットを眺めていたことを

今、思いだす。

 

私は、小学生の低学年の息子を連れて、

その実家の離れに住み始めていて、

それから何年経った頃だったのだろうか…定かではない。

 

私は随分と自身の田舎から逃れられない、

一人暮らしも2回したし、家出も小学生の時に1回した、

結婚もしたのに、また出戻ってしまうし、

ずっと嫌だと思って来た両親とは、なかなか離れられない人生だと思っていた。

それに、

作家になりたくてコツコツ文章を書いてブログをずっと書いたりしているが、

現実はそうは上手くいかないのか、私はずっとくすぶっている。

その時には、もう何度目かの覚醒体験もあって、

私に使命はあるだろうが、それは、誰に知られることもなく、終わる使命なのかもしれないと

思っていた。

 

昔から、田舎育ちだから思うのかもしれないけれど、

テレビの中の人や、成功者は、

夢のまた夢の雲の上の人に思えた。

私は、そのCDのジャケットを眺めて、

その音楽を聴きながら、

『この人達はいつも顔を出さない…、でも皆んなエリートだって聞いたわ』

『だから、顔を出さないんだって…』

そうか、・・・

と思いながら、

私は自分と比較した、

私は高学歴でもない、美大でさえお金を出してもらえず行けないままだった、

私は、成功者でもない、

まだ道半ばだと、希望を諦めたくはないが、

こんなに若くして、才能を思う存分に伸ばし、成功している人生とは

わけが違うのだ、

つい、そんな事を思ってしまう。

 

これは、彼らのCDに限ってのことではなかった、

お笑いで面白い人がいて、

寄席を見に行ってみたいかもと思っても行かないし、

明石家さんまさんの犬のぬいぐるみが出て来る番組では、

あのゴンタくんみたいな犬と話してみたい、

とか、

さんまさんと仲良く喋れる女優の人達を見ては、羨ましいと思った。

私は、成功者でもないし、あの場所に行くことは不可能だろうと思った。

かといって、私は追っかけのように、そんな遠い所まで行って

きゃーと言う気もさらさらなく。

TVで私を楽しませてくれて、いつもありがとう。と思った。

だから、芸能人の人や有名人や、成功者に、

私を気に入ってくれる人がいつか現れるなんて、これっぽっちも

思わない。

確かそんな時に、そんな頃に、

そのお囃子の祭囃子の笛の音や太鼓の音が聴こえて来て、

そうか、『今日はあのいつものお囃子の日なのね』

そう思いながら、ソファでくつろいでいた時のことだった、

 

私は、私の離れの家に父が物凄い形相で怒鳴り込んで来て、

母も後ろに着いて来て、

ソファに座りくつろいだ姿勢のまま、

『何事か・・・?』

と思い、

軽く目を見開いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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